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社員が辞めても、メールやクラウド、共有の保存場所のアカウントは、誰かが止めない限り残り続けます。IPA(情報処理推進機構)やメーカーの公開資料をもとに、一覧の作り方、止める順番、見落としやすい場所、人の側の手続きとの合わせ方を整理します。
01 辞めた人のアカウントは、自然には消えない
退職の手続きでは、保険や給与、貸していた鍵やパソコンの返却に目が向きます。一方で、メールやクラウドのアカウントは、社内の誰かが止めない限り、辞めたあとも使える状態で残ります。本人に悪気がなくても、使える入口が残っていること自体が、会社にとっては管理できていない状態です。
IPAが2021年に公開した「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」では、営業秘密が漏れた経路として最も多かったのが「中途退職者」で、36.3%でした。辞めた人を疑うための数字ではありません。退職は、情報の扱いが変わる節目であり、そこで入口を閉じる仕組みを持っておくことが大切だ、という意味で受け止めるとよいと思います。
02 まず、誰が何を使っているかの一覧を作る
アカウントを止めるには、その人がどこにアカウントを持っているかを知っている必要があります。ところが、社員が自分で登録したクラウドサービスや、部署ごとに契約した業務用のサービスは、総務の担当者が把握していないことがよくあります。
IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」(2026年10月時点で公開中の版)は、診断項目の一つで、データの共有設定を必要な人に限ることを求め、対策の例として、クラウドサービスや複合機、NAS(社内の共有保存場所)の共有の範囲を限ること、異動や退職のときには速やかに設定を変えるか削除することを挙げています。
そこで、社員ごとに、メール、業務用のクラウド、共有の保存場所、会計や勤怠のシステム、社外のサービスのIDを一覧にしておきます。入社のときに一行ずつ書き足し、退職のときにその行を上から順に片づける、という使い方にすると、抜けが出にくくなります。
03 止める順番と、すぐに消さない理由
メールやファイルを預けているサービスでは、いきなりアカウントを消すと、取引先とのやりとりや作りかけの資料まで失うことがあります。Microsoft 365の管理者向けの説明は、元従業員への対応として、最初にサインイン(ログイン)を止め、次にメールの中身を保存し、スマートフォンの会社のデータを消し、メールを後任に転送するか共有のメールボックスに切り替え、ほかの社員にデータを引き継いでから、最後にアカウントを削除する、という順番を示しています。削除したあとも、メールやOneDriveの中身は30日間残り、その間なら元に戻せるとしています(2026年10月時点)。
Google Workspaceの管理者向けヘルプも、削除の前にメールやドライブのファイルをほかの人に移すよう案内しています。一時的に使えなくする「停止」と、データごと消す「削除」は別の操作で、削除してから20日間はアカウントを元に戻せる、と説明しています(2026年10月時点)。どちらも、まず入口を閉じ、中身を引き継いでから消す、という考え方です。
04 見落としやすい場所
一つ目は、何人かで使い回しているIDとパスワードです。共用の通販サイトや、業者のサービスの管理画面、Wi-Fiのパスワードなどは、本人のアカウントを止めても使えてしまいます。辞めた人が知っていたものは、パスワードを変えておきます。
二つ目は、管理者の権限です。その人がシステムの管理者を務めていた場合は、先に別の人へ管理者の役割を移しておかないと、あとで設定を変えられなくなることがあります。三つ目は、私物のスマートフォンに入れた会社のメールやアプリです。会社のデータだけを消せる仕組みがあるかは、使っているサービスによって違うため、説明書やメーカーの案内で確かめてください。四つ目は、会社の公式SNSや、業者に作ってもらったホームページの管理画面です。担当していた人の個人のアカウントで登録されていないかも見ておきます。
05 人の側の手続きと合わせておく
アカウントの片づけは、システムだけでは完結しません。IPAの自社診断は、採用のときや退職のときに守秘義務を説明し、覚書を交わすことも対策の例に挙げています。IPAは2022年に「組織における内部不正防止ガイドライン」を第5版に改め、退職する人に向けた対策を強めました。経済産業省が同じ年の3月にまとめた「秘密情報の保護ハンドブック」の改訂の方針にも、契約が終わるときに権限を早めに消すことなどが盛り込まれています。
実際には、退職の届けを受けた時点で、総務の担当者がアカウントの一覧を開き、最終出社日にサインインを止め、ひと月ほどで引き継ぎを終えて削除する、という流れを決めておくと進めやすくなります。誓約書や就業規則の書き方など法律に関わることは、社会保険労務士や弁護士などの専門家にご相談ください。辞める人が一人もいない時期に、手順を一度紙に書いておくことが、いちばん手間の少ない備えです。
ミネルバ編集部
大阪市東淀川区で、法人向けのセキュリティ機器・サーバーの販売・施工・保守を行うミネルバ株式会社の編集チームです。記事は、公的機関やメーカーの情報を確かめたうえで作成し、公開前にスタッフが内容を確認しています。
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